「ものづくりの理想郷」への道のり

平和酒造山本典正のブログ

平和クラフト始動⑥

いよいよ今年も終わりに差し掛かり、、、2ヶ月も更新が滞っておりました、、、平和クラフト始動、、、遅筆もいいとこですよね、、、すみません。。。中古の機械をいれたものの、、、続きからです。
中古のビール機械を相手に、考古学者のようにさまざまに想像をめぐらしながら動かしていく作業がスタートしました。
機械には落書きのように20℃になったらこのボタンを押すとか、マイナス3℃まで落ちたらヒーターを上げるなどと直接マジックでペンキの上に書いてあります。

その一つ一つを高木さんと私とでディスカッションしながら読み取り、ビール造りをスタートさせました。
とはいえ全てを自分たちでやったわけではありません。
日本のクラフトビール界でも最も技術があると言われているブルワリーのネストビールで醸造長を務める方に来ていただいて指導してもらいながら最初のビール造りをスタートしました。

いい先達に技術を学ぼうという計画は私がビール講習で決めていたことでもありました。
高木は今でもその醸造長をビール造りの師匠として尊敬をしています。
まずは、麦汁を造って煮沸して、発酵タンクに移して酵母を入れていきますが、ネストビールの醸造長の手際のよさや経験値の高さは、一緒にビール造りをした私たちにとって驚愕でした。

とてもいい刺激を受けながら、ここまでは非常にスムーズにいきました。
お世話になった醸造長にお礼を言って送り出し、あとは私たちだけで発酵管理を行います。
発酵の1週間は、そのつど醸造長に報告していくのですが、心配する私たちをよそに健全な発酵をしてうまくいきました。
アルコール度数も、教えてもらった通り。最初にできた麦汁や発酵中のビールを飲むと麦茶のようで、おいしさのかけらもなく麦汁そのものだったのが、発酵が進むにつれてビールらしい味が出てきます。
「これはなかなか我々も大したもんだ」「本当に素晴らしいものを我々は作ろうとしているのに違いない」という勘違いをするほどでした。


ところが、です。

 

5日目くらいになったときに異変が起こりました。温度コントロールがうまくいかないのです。
ビールの温度をしっかりと下げて、「カーボネーション」といって、炭酸ガスを吹き込みたいのですが、温度を下げる作業がなかなかうまくいきません。
下げる加減は、機械に書いてあるメモを読み取りながら進めていくのですが、どんなにやってもうまくいかない。 
装置は非常に単純で、クーリング装置とヒーターがついているというものなのですが、
たとえば温度を3℃に管理したいときに、クーリングをかけると0℃近くまで下がってしまいます。
0℃まで下がるとセンサーが反応してヒーターが作動して6℃近くまで上がります。
そのときは夏の暑いさなかであったせいか、そもそも6℃以下に温度が下がりませんでした。  
6℃ではカーボネーションはできないので、「どんどん下げよう」と設定するのですが、クーリングを無理にしようとすると装置が熱をもってきてしまいます。
そこで装置の周りを氷で冷やしてみること思い付きます。
……そんなふうな精一杯の試行錯誤を繰り返し、なんとか発酵を終えたのでした。
いよいよ、ビールを熟成タンクから出して樽に落とそう、瓶詰めしようという段階になりました。
私はそのとき、朝から事務所でデスクワークをしていたのですが、高木さんが見るからにわくわくしているというふうな様子で、「今日から詰めていきます」と言って現場に向かっていきました。
「事務仕事が終わったらのぞきにいってみよう」いよいよビールが完全な姿で我々の前に現れるということで私もワクワクが止まらなくなってきました。
 
と、しばらくすると、高木さんが青ざめた顔で走りこんできました。そしてデスクの私に向かって叫びました。

「専務、ビールが凍結してます!」

「何を言っているんだ」と思ってビールの機械を見に走ると、600リットルのうち200くらいは凍結しているのがわかりました。
それは最初のビール造りが見事に失敗したことを意味しました。

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※写真は新しい発酵タンク
【平和クラフト始動⑦】に続く